セッションハウス・アワード2016

セッションハウス・アワード ダンス花2016

セッションハウス・アワード2016
審査員賞 松本武士『ーdokoー』
観客賞 五十嵐結也『さよならともぢくん』に決定しました。

“2016年「ダンス花・アワード」受賞者発表”
今回も「もう一度見たいダンス」として選出された個性的な10作品が並びました。視点を変えるとどれが選ばれても不思議ではない作品が揃いました。
選考にあたり@作品の強度A独自の身体性B外への発信力などを基準に、各自が選考。
審査員がそれぞれの推薦作品を持って集まり、受賞作の選考にあたりました。
その結果、三人が揃って評価した作品は、松本武士作品、五十嵐結也作品の2作品となりました。話し合いの結果今年もベスト賞は見送りとなり、「審査員賞 松本武士」「観客賞 五十嵐結也」と決定いたしました。
各自の身体能力の高さや題材の独自性等、コンテンポラリーダンスならではの魅力に富んだ作品が並びましたが、最近の作品傾向として“内向きなのが残念だ“と審査員全員感じるところでした。作品の独自性は全員十分に持ち合わせていましたが、テクニックだけではない、身体の訴える強さはまだ研究の余地があると感じます。どうしたら各自の内面がエネルギーとして外へ開いていくか、それぞれの研鑽が待たれるところです。今回は審査員全員が”良し“とした作品を受賞としましたが、審査員一人ずつが推薦した各作品も劣らずに素晴らしいものです。今後もいろんな場所で皆様が発表を続け発展されることを祈ります。挑戦してくださった10人の振付家皆様に感謝をささげるとともに、今後も共にダンスを創りそして届ける、「ダンスの文化」を豊かに積み上げていきたいと考えます。

−伊藤直子

 

松本武士作品について
ダンスは何を含むことができ、何をわしづかみにすることが出来得るのかを探ったことが面白い。
五十嵐結也作品について
シーンの持つ効力を縫いつなげる感覚がずば抜けている。   

−松本大樹

 

今回もたくさんの意欲を感じた。
松本武士さんは、これからのダンスの世界を引っ張っていくと感じた。
五十嵐結也さんは褒められて伸びる気がする。これからも頼むぞ。

 

あえて2人に言うなら。
松本さん 、ストイックで上手。だがそこに陥るな。
いがちゃん、ネタにはするな、ダンスにしろ。下品にはなるな。

−近藤良平

 

 

松本武士

審査員賞
松本武士『ーdokoー』

 

プロフィール
ダンサー、ダンスセラピスト。
2008年より英国にてイスラエル出身のハギット・ヤキラと創作・公演。
他、ダレンジョンストン、ピナバウシュに出演経験。
2014年帰国より自己の作品を創作・発表。


五十嵐結也

観客賞
五十嵐結也『さよならともぢくん』

 

プロフィール
幼少の頃から、「顔がデカい」「手足が短い」と弄ばれ、
身体的コンプレックスに真剣に悩まされた内気な肥満児時代を送る。
中学、高校と、親元離れて長野と山形の大自然の中で暮らしたことが功を成し、
大学でダンスに出会ったことで自己表現に目覚める。現在、舞台ほか、MV、
CM出演など、コンプレックスを破壊力に変えて絶賛活動中。


2016年の「ダンス花アワード」基本情報及び10作品の講評
(文:松本大樹)

2016 1/9公演
@ザ・プレミアム・ワルツ『アンチクトン』
振付・出演 酒井直之、橋本迅矢
大量な振り数をどんどん生む力、目を引きます。つくろうとすると素通りしてしまいそうな通過途中のような形をよく捕まえた面白いシェイプが沢山あって魅力的でした。選択する感覚をこれから更に研ぎ澄ましていくのでしょう。光があることが生む闇を感じました。やみ、影、とは実は黒ではなく白だとしたら。そこに在ることだとしたら。逆転した仮説を立てながらみれて面白い。
二人の距離を工夫する、たとえばすごく至近距離で同じ動きをみせると危険がともなう危うさが生じ、その運動の特性と正確な技術力、再現力を際立たせてこの作品にいいのかもしれません。

 

Aibis『#NBU make some boys remix』
振付・出演 ibis、aokid、橋本匠a.k.a抜け作、福原冠(声のみ)
コラージュが重なり合って満ちてくる時間、面白いです。この本番の身体、音へのこだわり、他者への関わりや放置をリハーサルで積み上げていったのち残る、高揚感を与えるほどの動きの組み合わせや状況のねじれを生み出せていけたら、そのとき本人たちが感じるように、観るものを引き込めていけるのではと思いました。音楽の小節のとり方が行儀いいです。音楽感覚がいい人の長所でもあり、それは慣れでもあり、研究する余地ありです。音楽を時折無視したり放置したりしてみることが、身体を意外な新鮮さや慌て、納得にたどり着かせてくれるかもしれませんね、音の特性を感覚出来ている人だから勧めるわけですが。

 

B松本武士『ーdokoー』
コンセプト・振付・出演 松本武士
呪術的だった。円の外に向けられた顔面が指先の無意識を意味してみえて、身体は内世界と交信しているような。胸倒立した瞬間、中央に再び白円が現れる錯覚がおきた。ブルーの照明というものをはじめて綺麗だと思いました。この作品における照明の推移に必然を感じます。照明デザインが作品を成立させる役割を研究しうる作品内容でありとてもやりがいがあるだろうと推測します。スカートを出すことで新たな何かと何かのズレが立ち上がる。それは印象と実態、観るものと行為者、あての外れ、理解することの健全なる放棄、、。誰か別の人物を憑依させているようにもみえる。曲の進行具合とその現象のマッチングもよかった。ダンスはなにを含むことができ、言葉では引きずり出す事の出来ないなにをわしづかみにすることが出来得るのかを、探ったことが面白い。

 

C五十嵐結也『さよならともぢくん』
振付・出演 五十嵐結也
流れた先輩を知らされた後、あの圧にあらがおうと挑む作者独自な姿をみたくなりました。前半との分量が逆転していくくらいあの圧に詰め寄るダンスを掘れる人だと思いました、みていて一緒にあの圧に向き合わせてもらいたかったです。シーンの持つ効力を縫いつなげる感覚がずば抜けていると感じました。だからこそ欲がでます。

 

DカンカQ『Bybye〜売られた本能 買う支配〜』
振付・出演 長嶋 樹、三浦健太朗
自分たちの世界に引き込む力があるパフォーマーだと感じたのは、情感が動きに宿っているからです。なにをどう踊っても2人の船は沈まない感がある。退廃的なモードやイメージを“動”でもって視覚化できた稀な例だと思います。ムーヴメント自体の独創値を突き抜けてしまってください。二個の身体が困るぐらいなもの、みてみたいです。螺旋の軌道の中断や制止といった力技も、捨てといった少々乱暴なものも、それらが起こす事故性と、その不安定さを感じて反射するバランス感覚に身をまかせてそれでも続けていけるとき、どれだけ強く安定したものなのかを実感するのでしょう。

 

2016 9/17公演

 

@岩本大紀・渡邉 茜『egg』
振付・出演 岩本大紀、渡邉 茜
再度かぶせる時の紙袋マスクが二重にしてあるのがよかった。あのマスクの山はアイデンティティー、もしくは区分としての意味合いが込められたものの置き場に思えました。あれを選び、まとったら不思議なことに人体がジェンダーや意味の読みにくい、あるいは無いただの塊に思え興味深い。2つの体同士も良く馴染み合い、作品の内容を届ける媒体となり得ていてすばらしかった。

 

A櫻井拓斗・ 酒井大輝
『カフェ・オ・レ(Coffee and milk)』
振付・出演 櫻井拓斗、酒井大輝
このダンスが観る者から引き出すもの、癒やしのようなあたたかさは踊ろうとする原点を思い出させてくれる。人柄が導いていく優しさや受け入れることの意義を特性としてあげるなら、劇場での上演作品としてというよりも、医療や教育の分野での確かな力を発揮する可能性、ニーズをこの作品、ひいては作品づくりのプロセスに感じました。

 

Banfit『I my me mine』
振付・出演 樋口あかり、酒井銀丈
大いなる創作への火を感じ、頼もしく思いました。作ろうとするものが先にあるらしく、ダンサーがそのテーマにまだ馴染めていないようにみえてしまい、そこは残念でした。この2つの体だから出来るものから発信してつくるやり方も試してみてはどうだろうかと思います。ヴィジョンのような火は何からどう切り込んで、たとえ脱線したとしてもそれでも見えなくなるようなものでは絶対にないです。

 

Cgosh『ラインジョウノボクラ』
振付・出演 松隈加奈子、蓮子奈津美
触わりきれない、触れることの意味の薄さを振りと踊る身体から感覚します。触れたいから近づく訳ではないように見受けたので、離れてしまうことの意味も薄いまま振付が進行していくことが見る側の集中を掴むところまではどうしてもいけませんでした。奥、手前で組手を分けてのソロとして踊る画は、どこかありふれているようでがしかし、なぜかとても新鮮だった!隣にいてくれながらのソロといった位置がしっくりきました。要らないものを削いで残ったもの、その残したものを際立たせていこうとしていく過程でその素材の特性を意識できる事もあります。なにが好きかが自覚できてない時には本人には普通な事でも、そのことに改めて着目しなおし、気づき気持ちを込めれば明確に特性になる。

 

Dセトナイカ〜イ『空母』
振付 玉井翔 
出演 加藤朱万理、庄司舞、玉井宏美、矢越沙保里、玉井翔
始まり方、崩れるところの創作性が抜群。生む形が観るものの感性にねじ込んでくるほどの力を強烈に感じました。愛やヒューマニティに溢れた振付なだけにダンサー一人一人からの温かみがもうひとつ感じられないのが結果として デザイン にみえてしまい、残念だなぁと個人的にとても惜しく思いました。

過去のセッションハウス・アワード受賞ダンサー

セッションハウス・アワード2012

第1回セッションベスト賞 中村蓉 『別れの詩』

 

セッションハウス・アワード2013

第2回セッションベスト賞 小暮香帆 『涙の球体』
セッション奨励賞 望月崇博

 

セッションハウス・アワード2014

第3回セッションベスト賞鈴木竜 『Agnus』

 

セッションハウス・アワード2015

観客賞 DEBEDEBE☆1号『ewig』
奨励賞 tantan『生きるために食う。』

 

セッションハウス・アワード2016

審査員賞 松本武士『―doko―』
観客賞 五十嵐結也『さよならともぢくん』

 

セッションハウス・アワード2017

セッションベスト賞 スッポンザル(小林利那・藤島美乃里)『鼈』

 

セッションハウス・アワード2018

チャレンジ賞 江上真子『Juliet』
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