Zoom 感想会報告

Voice of Mochizuki Takahiro

「ダンスブリッジ」や「ダンス花」「シアター 21フェス」などで公演後に「メール感想会」を開くなど、振付家と観客の作品の捉え方を研究分析しているコーディネーター望月崇博からの報告です。

Zoom 感想会報告 望月崇博

昨年度の「ダンス花」などでの新たな試みとして「上演」だけでなく「事後トーク」(各公演後の水曜夜に観客、出演者参加の Zoomを活用した感想会:以下Zoom 感想会)を設けた。「Zoom感想会」は「観客主体の参加」を重視し、作品から享受したものを誰かと共有することで発展的な作品鑑賞になるのではというところから始めた。コーディネーターの進行の元、振付家の作品創作の内側や着眼点、作品解説に加え、各ダンサーによる他の振付家の作品の捉え方、観客の疑問点の解消など多岐に渡り、作品を掘り下げる作業が出来、ダンサー側にも観客側にも収穫をもたらしたことが前年度の成果として挙げられる。今年度はその成果と可能性を若手ダンサーの活動支援に活用した。コロナ以降、劇場に足を運び観劇する行為は減少し、若手ダンサーは活動(生活)していくことが困難となり芸術活動をやめてしまう一因となっているが、物理的な対応策として多くの若手助成支援(金銭的助成支援)がなされている。他方で上演芸術は観客と演者のコミュニケーションによってなされ、観客の存在が上演作品の精度を上げる(ダンサーの成長を促す)要因となり、活動継続には観客の存在が不可欠であることも一理ある。以上のような理由から観客とダンサーの質的な交流を図った支援は舞踊活動継続を促進するものと言える。

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「U25」櫻井拓斗

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「U35」小林菜々

 

今年度においてはU25、U35 のダンサーを募って支援プロジェクトとして行った(本稿執筆段階では継続中)。若手ダンサー支援プロジェクトの概要として石渕聡先生(大東文化大学教授かつコンドルズ、チーム鴨川メンバー)と筆者(帝京科学大学専任講師かつトップスター、チーム鴨川メンバー)の実践的舞踊研究者の両名が監修者となり、
@U25、U35 で応募されたダンサーを選定、
A作品上演(U25 は 10/14、U35 は 11/18)、
B「Zoom 感想会」(U25 は 10/18、U35 は 11/22)、
Cダンス花出演者 5名を選出、
Dダンス花出演者へのフィードバックと新作に向けたアドバイス、
Eダンス花公演(2024年2月17日)、
F「Zoom 感想会」(2024年2月21日)という流れであった。

 

Aの作品上演後の観客アンケートでは「書きたいと思うダンサーへの感想」として観客の主体性を促す形で記述してもらい、Bの「Zoom 感想会」の資料とした。Bの「Zoom 感想会」は各ダンサーに作品のコンセプトや着眼点を述べてもらい、監修者2人の作品分析、アンケートをカテゴリーで分類したものを各ダンサーに提示という流れで行っ た。アンケート分析として例えば、「作 品 から野心を感じた」、「見えないからこそ見えるもの、こういうあり方もあると感じた」等の意見は【印象(表象)】とカテゴライズし、その他にも【動き】【構成】【演出】【アドバイス】と具体的意見からカテゴライズしダンサーに提示した(櫻井拓斗のアンケート分析より)。DのフィードバックはBの「Zoom 感想会」でダンサー自身の作品コンセプトの言及をテキストマイニングしたもの(テキストマイニング分析はダンサー本人が語った言葉を頻出単語ごとに分け、頻出順に単語が大きく図示され、自分が何を重視して作品を創作していたのかが視覚的にわかる効果がある。例えば大西彩瑛さんの場合、「作品」「作り物」「観客」「放置させない」「実」「虚」などが頻出しており、『これもジョーク』という作品の根幹が明確に語られていたことが理解できた。)と、監修者による新作に向けたアドバイス(例えば大西彩瑛さんの場合、コンテンポラリーダンスにおける音響的効果についてのアドバイス)を資料にまとめ提示し、新作創作の素材とした。これらのような作品上演、作品分析、共有といった継続的な関わりは、ダンサーの客観的視点での立ち返りを促すことを可能にしたのではないかと言える。実際ダンサーからは客観的な意見から自身の状態を冷静に見る機会になったことや、今回に限らず今後の創作の参考となったことなど一定の評価を得られた。ダンス花公演前での執筆のためどのように具現化されているかは未知数であり、もちろんここでは言及できないが、いずれにせよ2月のダンス花公演が楽しみである。

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「U35」木河皮成&雷はつ菜

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「U35」大西彩瑛&村井玲美

 

さて、ここ数年セッションハウスや他の劇場で若い(一概に年齢で定義はできないが・・・)ダンサーたちの作品を鑑賞する機会があり、モヤモヤと抱いていた問題点が今回の若手ダンサー支援プロジェクトを行ってみて、はっきりと輪郭を帯びてきた。いくつか列挙してみよう。@いわゆるダンスのテクニックはあるが、A作品コンセプトは明確であるが、Bコンセプトを伝える作品構成力もあるが、、、「伝える」ということに欠けている。身体が開かれていないと感じてしまう。ダンスはアートであるが、観客が存在した時点でエンターテイメントでもある。そういった意味で自己完結しがちなダンスをとにかく開くこと!なぜならダンスだから。開かれたダンスはどんなものでも尊いと感じる。「伝える」ということを重視すれば必然と観客動員につながるのではないかとも考えられます。上記した 3 点に加え、ダンスの原点である踊る喜び、生きる喜びが身体を通して伝わったらそれはそれは素敵なことであるし、そんなダンスを見てみたい。現代のダンスだからこそ踊る身体の原点を忘れず、見つめ直し、アップデートさせていくことが望まれよう。このような基準からダンス花に出演する 5 名を選定した。再度、2 月のダンス花公演が楽しみである。

望月崇博

ヴォイス・オブ・セッションハウス2023より抜粋

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「ダンス花」choi hyobin &nam heekyung(韓国)

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「ダンス花」鈴木亮祐&茂木孝介

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「ダンス花」山村佑理

 

【付記】セッションハウス、アワード 2023 受賞者決まる

「未来賞」:G-ray(鈴木亮祐、茂木孝介)、N.motion Dance

Project(Choi hyo-bin、Nam hee-kyung)

韓国国際フェスティバル「New Dance Asia」招聘

:APINUN(山村佑理、あずみぴあの)

審査員:尾本安代、笠井瑞丈、松本大樹

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